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プレゼンテーションの達人


 大学では、研究成果をうまく発表する技術は非常に重要です。発表の中でも特に危機的状況をいかに切れ抜けるかという点について、実例をもとに考えて見ましょう。

(1)英語を母国語とする人の場合
 機械工学科の卒業設計では一年間で計六回の発表があります。4〜5人の教授がこの発表を聞き採点します。この発表の成績とレポートの採点結果で学生の成績が決まります。発表の後には質疑応答の時間があり、教授陣から厳しい指摘が相次ぐこともままあります。一般にアメリカの学生は発表が上手ですが、発表の成績が卒業設計の成績に直結することもあってほとんどの人はかなり緊張して発表に臨みます。でも、ぜんぜん緊張してないやつもたまにいます。

(事例1)
 男性三人、女性一人のグループが、4年生の卒業設計の課題の発表を終えたところでE教授(ドイツ)が質問に立つ。
E教授:「二つ質問があるんだけれど、まずさっきの気温のグラフを見せてくれる?」
(グループのうちの一人が発表に使ったスライドを戻して気温のグラフをスクリーンに映す。二週間分の大気温の変化を示すグラフのはずだが、温度が一直線になっていて明らかにおかしい。)
E教授:「このデータはおかしいぞ。測定器の接触が外れていたか何かじゃないの?」
男A:「(測定器に異常があるわけではなく)実際に気温がほとんど変化しなかったんだと思います。」
E教授:「そんなことないぞ。二週間も気温が一直線になるわけないでしょ。見ればわかるでしょ。途中でデータが飛んでるよ。データがおかしいということに気づかないと......」
ハナ(グループ中唯一の女性):(にっこり微笑みながら)「先生、二つ目の質問は何ですか?」

教授陣も笑ってしまい、E教授はしたかなしに次の質問に移る。

 これが学年最後の発表で、この発表を乗り切れば後は卒業式を待つばかりという時期のやり取りです。この質疑応答が終わればすべてから開放される、と思うと怖いものは何んにも無かったようです。にっこりする表情が効果抜群でした。

(事例2)
 男性二人、女性三人のグループの卒業設計の発表で、今まで淡々と説明していたグループの一員エバが説明を終えたところで急に笑い出し、次のスライドをスクリーンに映す。スクリーンには大きな字で、
「続いて起こる賞賛の嵐..... 。」ずっと下のほうに小さく「それとも....。」

 教授陣から厳しい質問が来ることもあるので、質疑応答は学生にとっていやなものです。適切なユーモアは場を和ませる効果があります。このエバというのは台湾のえば子ちゃんとは別人です。

(事例3)
 「事例2」で出てきたグループが卒業設計の発表を終えた。質疑応答に移ったところで教授陣が一瞬沈黙する。

 すかさずエバが「わー。」と言いながら、中央にある机に駆け寄り帰る準備をしようとする。エバはかかとの高いブーツをはいていたので、足音がダンダンダンと響いた。教授陣の一人T教授(インド)が「まだまだ。」と言い止めた。

 この「わー。」というのは、「わーい、質問なしで終わった。」の「わー。」だったようです。


(2)英語を母国語としない人の場合
 留学生と言えども英語での発表から逃れることはできません。大学院の授業ではよく試験とは別に課題の発表を要求されます。

(事例4)
 授業中に課題についての発表していたえば子ちゃん(台湾)は案の定しどろもどろになってしまった。その時えば子ちゃんはものすごく困った顔をして、
「わかりますか?..... (しばらく気まずい沈黙)わからないですよね。」

 そのまま次の説明を話し始めた。

 その場では「えば子ちゃんはどうなっちゃうんだろう。」とかなりいたたまれない気持ちだったので笑うどころではなかったし、誰も笑ったりしませんでした。でも、後から思い返すとジワジワとおかしさがこみ上げてきます。

ニューヨーク スカイライン(2004年11月29日)

EXPERTS IN PRESENTATIONS
NEW YORK SKYLINE

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